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【映画レビュー】押井守監督作品「イノセンス」から何を受け取ったのか

どうもメガネです。

押井守監督の「イノセンス」を久々に観ました。余談ですがBlu-rayを数年前に購入したはずが、パッケージはあるのにディスクがない・・・。Amazonプライムに有料でもない・・・。どうしても観たかったので仕方なく数年ぶりにTSUTAYAを利用しました。

イノセンスは2004年に劇場公開されたアニメ映画作品です。1995年に公開された「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の完全なる続編にあたりますが、当時はそのことを意図的に隠された状態でプロモーションされていたので、前作を見ずに鑑賞された方からすると登場人物など「??」な状態だったのではないでしょうか。(私はDVDで初めて観たのですが、はい?状態でした(笑))

今回は作品レビューというよりも作品全体のテーマ等を中心に書いていきます。

 

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作品解説・魅力

圧倒的映像美

正直いま見ると、荒いCGだなぁなんて思ったりもしますが、当時はすごかった。一つ一つのディティールの作り込みがとにかく凄い。人間の表情筋にすごく拘りを感じますね。ラストの女の子の表情は結構不快です(笑)またCGではない、セル画部分では押井節というか全体的にドライに仕上がっていて、所謂大人アニメとして安心して観れます。個人的にはキムの屋敷の描写がどれも高品質でお気に入りです。金ピカの扉とか。

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引用ばかりのセリフ回し

監督は当初、全てのセリフを引用にしようとしたとか(笑)意味分かる訳ねーだろ(笑)しかしこの特徴的なセリフ回しが本作の魅力の一つです。イチイチ格好いいからなんかムカつくんですよねぇ〜。以下、お気に入りのセリフたち。

  • 自分の面が曲がっているのに、鏡を責めてなんになる
  • ロバが旅に出たところで、馬になって帰ってくるわけじゃねぇ
  • 人体は自らゼンマイを巻く機械であり、永久運動の生きた見本である
  • 神は永遠に幾何学する
  • 思い出をその記憶と分かつものは何もない。そしてそれがどちらであれ、それが理解されるのは常に後になってからのことでしかない
  • 鳥の血に悲しめど、魚の血に悲しまず。声あるものは幸いなり

ロボット三原則

本作はロクスソルス社のセクサロイド(性行する機能をもつガイノイド)ハダリの暴走(持ち主の殺害)からストーリーが始まりますが、多くのアンドロイドを扱った作品がそうであるように、本作もアイザック・アシモフの「ロボット三原則」を雛形にロボットの行動規範を定めていると思われます。

ロボット三原則

第一条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条:ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条:ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
— 2058年の「ロボット工学ハンドブック」第56版、『われはロボット』より

この原則に当てはめると第一条に抵触するため、作中のガイノイドたちは自らを故障させることにより、一連の行動をバグとして処理しようとします。

ゴーストとはなにか?

これは攻殻機動隊の中で度々登場するワード・価値観です。実社会の中で最も近い言葉は「魂」や「自我」でしょうか。身体の改造が容易となった作品世界のおいては、外見や身体の構成要素(義体や義肢、電脳)等が他人と同質のものとなったあとも、「私は私である」という確固としたアイデンティティの拠り所となるもの、それが「ゴースト」です。

草薙素子

前作の主人公であり、前作のラストで人形使いと同化することにより電脳世界へ旅立った草薙素子こと少佐ですが、今作では終盤にバトーを加勢する為に登場します。前作で彼女は非常に葛藤するキャラクターでした。全身(脳を含む)を義体化している彼女はゴーストが揺らぎ、「自分とは何者なのか」「本当に存在するのか」と自問自答します。今作では当時の彼女のようにバトーが葛藤するわけです。最終盤バトーは少佐に質問を投げかけます。

「一つ聞かせてくれ。今の自分を幸福だと感じるか」

それに対する少佐の回答は

「懐かしい価値観ね。少なくとも今の私に葛藤は存在しないわ」

潜在的なテーマ

人間とはなにか

本作は私にサイバーパンク的思想を初めに植えつけた作品と言えます。

フィリップ・K・ディックの時代から続く「人間とはなにか?」というテーマ(近年ではやや使い古されすぎて逆に陳腐化してますが)に真正面から切り込んだ作品と言えます。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

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ではここで読者の皆様に質問です。人間とはなんでしょうか?人間の説明をしてください。と言われて、スラスラ答えられる人はどれくらいいるでしょう?ちなみにWikipediaではこのように説明されています。

人間(にんげん、英: human being)とは、以下の概念を指す。
人のすむところ。世の中。世間。人が生きている人と人の関係の世界。またそうした人間社会の中で脆くはかないさまを概念的に表すことば。
(社会的なありかた、人格を中心にとらえた)人。また、その全体。
ひとがら。「人物」。 

うーん。よくわからん。というのが正直なところでしょうか。では質問を変えましょう

  1. クローン(ある特定の人物と全く同じ遺伝構造をもつ生物)は人間か?(例:メタルギアソリッドのスネーク等)
  2. 脳を含めた全ての器官を機械パーツに代替された人物は人間か?(例:サイボーグ009等)
  3. 全てを機械パーツで作られ、AIで稼働する感情を持ったロボットは人間か?(例:ドラえもん、ターミネーター2等)
  4. 無機物等に人間の魂や人格が乗り移ったものは人間か?(例:チャイルドプレイのチャッキー、鋼の錬金術師のアルフォンス等)

イノセンスのテーマはこういった質問に集約されます。上述の四つの質問に対し、私たちは人それぞれ異なりつつも明確な考え方や答えを持っています。それぞれの人間観によって回答は異なると思いますが、概ね判断材料は以下の三つでしょう。

  1. 外見的要素(人間の見た目に似ているか、人間らしい仕草をするか)
  2. 精神的要素(人間と似たような考え方をするか、喜怒哀楽があるか)
  3. 出自的要素(どのように生まれたか)

私の経験上「3.出自的要素」を最も重要視する人が多いように感じます。先ほどの四つの質問に対して、「3.全てを機械パーツで作られ、AIで稼働する感情を持ったロボットは人間か?」以外が人間であると答える人が圧倒的に多いのが実態です。

無論、正解はありません。宗教観や文化によっても異なることでしょう。このパートで申し上げたかったのは、「人間が人間を定義するとき、その境界線は非常に曖昧である」ということです。

不気味の谷現象

「不気味の谷現象」という言葉をご存知でしょうか?

わかりやすくいうならば人形やマネキン、人体模型等の人間を模したものに感じる恐怖感や嫌悪感のことです。ちなみになぜそのような感情を抱くのかは、はっきりと証明されていません。考えてみれば人形を題材とした怪談話は多く存在しますが、それらはこの「不気味の谷現象」をうまく活用した例です。

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なぜ人は人形を作るのか

今も昔も、人間は人間を模したもの(人形、ロボット等)を作り続けています。作中でも触れられていますが、人形こそが人間の理想形であり、一方で人間自体も人形に還元されてしまうのではないかという恐怖との葛藤が、人間に人間を作るという行為に走らせているのかもしれません。そして人間が精巧に作ろうとすればするほど、前項で触れたように製造物は不気味さを帯びるという、一種の皮肉があります。

まとめ

正直作品的には「是非観てください!」とおすすめできる作品ではないですが、私の中では印象深く大切な作品です。定期的に観たくなるので、マジでディスク探さないと。マジでどこいったんだよ。

 

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