Anarchy WORKSHOP

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【漫画】新装版で#29が公開された「ソラニン」を久々に読んだ

どうもメガネです。今日は浅野いにお氏の青春漫画「ソラニン」について書いていきます。

ソラニンは私の中で非常に様々な意味をもつ漫画でもあり、高校生の頃にこの漫画に出会ってなかったら「もしかしたら違う人間性を持って、違う人生を歩んでいたんじゃないかなぁ」なんて多少大袈裟に捉えたりしています。

それぐらい今の自分の持つ「独特の面倒臭い性格」はソラニンをはじめとした浅野いにお作品に影響を受けています。

そんなソラニンが連載されていたのは今から13年前の2005年。多分最後に読んだのは5年以上前で、年齢を重ねるにつれて浅野いにお作品から緩やかに遠ざかっていたのですが、つい先日「零落」を読んだ際に浅野氏のインタビューを目にし、ソラニンの新装版(全2巻の本作を1冊にまとめたもの)が2017年に出ていることを知り、しかもなんと12年越しに続編が描かれているというではないですか。「これは見ないわけにはいかん」というわけで電子版を購入し、超久しぶりに本編を含めて読んでみました。

 

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一応あらすじ(ネタバレあり、というか物語の全て)

社会人2年目の井上芽衣子は、将来に希望を感じられずにいた。社会や大人に対し不平不満がありつつ、しかしどうすればいいのかわからないまま、ついに勢いで会社を辞めてしまう。

芽衣子の同棲相手であり恋人の種田成男は、大学時代のバンド仲間である加藤、ビリーと定期的に会い、デザイン事務所のアルバイトの合間を縫ってバンド活動を細々と続けていた。喧嘩し、互いに励まし合いながら、先の見えない生活を続けていく芽衣子と種田。やがて、自身の音楽の才能は平凡と言い張り、逃げの姿勢である種田に対し芽衣子は苛立ちを隠せなくなり「バンドをやってほしい」と自分の思いをぶつける。その芽衣子の一言から種田はアルバイトを辞め、再びバンド活動に熱を入れることを決めた。そして加藤、ビリーらに声をかけ、自身の新曲である「ソラニン」をレコーディングする。

そのデモCDを送ったレコード会社のうち1社から反応があり、種田、芽衣子、ビリーの3人は会社を訪れ冴木という人物に会う。話の内容は、これからアーティスト活動で売りに出す新人グラビアアイドルのバックバンドの依頼だった。

冴木を前に黙っている種田の気持ちを代弁するかのように、芽衣子はその話を断った。以降デモCDの反応はなく、夏が過ぎ去り秋が訪れようとしていた頃、種田は芽衣子に対し突然別れ話を持ち出す。その場は和解したものの、種田は散歩に行くと言ったきり帰って来なかった。種田から連絡があったのは5日後で、彼は以前辞めたデザイン事務所でもう一度働き始めた事、そしてこれまでの思いを芽衣子に伝える。「これからは2人で幸せになろう」と、互いの思いを再確認した帰り道、種田は交通事故で他界してしまう。

それから2か月、芽衣子は心にぽっかりと穴が空いてしまったようであった。そんな中、種田の父親が芽衣子の元を訪れる。自分を責め続けている芽衣子に対し、種田の父は「彼を忘れないでやって欲しい」という事、そして「彼が居た事を証明し続けるのが、あなたの役割なのかもしれない」と言い残す。その言葉を聞き、芽衣子は種田のギターを手に取る。ビリーたちとともにバンドを再開させた芽衣子はギターの練習を重ね、ライブハウスのステージに立ち、芽衣子のボーカルで種田の残した曲「ソラニン」を歌うのだった。

ーWikipediaより引用ー

 アラサーになった自分の「今の感じ方」

この漫画を初めて手に取ったのは17歳の頃で、それは学校の図書室でした。今冷静に考えてみると作中の種田と芽衣子は24歳で、どちらかというと高校生の頃より社会人である今の自分の方が近い存在だったはずなのだけれど、不思議と深く共感したのを覚えています。その頃の私は少し背伸びをしたいようなどこにでもいる少しだけマセた少年で、カメラとか海外放浪とか自由とか、そういった類の物に痛い憧れを抱いていたことも確かです。

アラサーになった自分が改めて読んでみて、まず感じたのは正直「あれ、こんなに青くさかったっけ?」という感情でした。種田も芽衣子も24歳にしてはかなり幼稚な感情や価値観を持っていて、はっきり言ってしまえば今の自分ではまるで共感できないような無責任さとか未熟さがありました。そういった意味でいえばこの作品はやはり10代から20代前半くらいまでに出会っておくべき作品なのかもしれません。

しかしそういった感情は決してネガティブに感じるわけではなくて、間違いなくこの作品に「共感していた自分」というのが過去の時間軸には存在していて、漠然とした将来に対する不安とか、就職することで人生が確定してしまうような視野偏狭な強迫観念とかそういう青臭い感情を思い出させてくれる作品になった、あるいはなってしまったんだなぁというノスタルジーがあったりします。いうならば昔の写真を見て、今見てみると全然イケてない前髪とか服装のセンスとかそういうのをまざまざと見せつけられているような感じ。

とにもかくにも、この頃の私は種田と芽衣子の関係や生活に憧れ、自分もなにか大きいことができるんじゃないかなんて考えていたわけです。

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24歳のフリーター種田。今見てみると年齢よりもだいぶ幼く見えます。
種田の死に意味はあるか

近年は「キャラクターの死」が物語において重要な役割を果たす作品をみる際は「その死がしっかりと意味を持っているか」という点に着目するようにしています。もちろん種田の死は物語の起承転結でいうところの「転」に該当する部分で必要な部分はあるのですが、ここでいう「意味」とは「死がエモーショナル以外の意味をもつか」です。

※誤解のないように追記しますが、エモーショナルな死が悪いといっているわけではなく、あくまで意味があるかないかを考えるというだけです。

種田の死が生み出したものは一言でいってしまえば「芽衣子の前進」です。しかし種田が死ななかったら芽衣子は前に進めなかったのか?というとそれも些か疑問が残ります。今改めて考えた時に、エモーショナル以外の部分を見つけられないかぁと思います。種田が生きているエンドがあってもいいかなと。

種田の死は本当に事故なのか

初めて読んでから今日まで確信が持てないことがあって、それは「種田の死は事故だったのか、自殺だったのか」という点です。

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音楽の夢を諦め、社会人としての一歩を踏み出すことを決めた種田。芽衣子にそのことを電話で伝えて帰路へ着く途中にスクーターで赤信号を無視し、車に撥ねられ死んでしまいます。自分に「俺は幸せだ」と言い聞かせながら涙を流し、アクセルを強く握る種田(ブレーキをかける様子はありません)と光る赤信号。当時はこの描写を種田の自殺として捉えていたような気がします。種田の父親の発言とか、種田の最後の描写とかを今の感覚で総合的に判断すると、感情が高ぶっていただけで別に自殺ってわけじゃないのか?なんて思えたりもしますが、本当のところは継続して謎です。

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物語を総合して

物語のラスト。芽衣子は再就職し、種田と同棲した2LDKの部屋から引っ越します。映画「永い言い訳」レビューでも書いたように「どんなにつらくても、悲しくても、僕たちは忘れて生きていくしかない」というある意味平凡な、だけどどうしもなく現実的なラストを叙情的に、若者的に、モラトリアムに描きあげていきます。

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この作品は一言でいってしまえば、「モラトリアムの狭間にある若者たちにてんやわんや何かあるけど、最後は前向きに」的な作品なのかもしれません。この頃の浅野いにお氏も「叙情的・感傷的に書いてるだけで、内容がない」なんて批判をよく受けてました。それでも私に取ってこの作品は青春の1ページと呼ぶのに相応しい名作で、人生に大きな影響を与えてくれたことに間違いはありません。

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#29について

12年越しに描かれた続編で、現実と同じ時間が経過しています。24歳だった芽衣子は36歳になり、種田とは別の男性と結婚しています。バンドメンバーたちも登場しますが、かなり年をとった様子。物語は芽衣子がアイちゃんに妊娠したことを報告し、久々に加藤、ビリーのバンド演奏を見にいくという内容です。

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読者たちと同じように年をとった芽衣子。作中で「種田」や「あの人」といった描写は一切出てきません。種田は芽衣子にとってもはや過去の人で、そこにはあの頃のような感傷は当然ながらありません。青臭く悩んでいたちょっと幼稚だった女性の影はもうなく、これから中年に差し掛かっていく落ち着きも兼ね備えています。

種田の父親が「アイツを忘れないでほしい」と言っていたことを思うと、ほんの少し悲しくもあるし、読者の身勝手な気持ちとしては「だったらあの時の涙や感情はなんだったのさ!種田を忘れないで!」と思いたくなる部分でもあります。でも浅野氏が「おやすみプンプン」等を通して一貫して描いてきた「忘れていくこと」の一つの完成形でもあると私は思います。

芽衣子は今後もっと時間をかけて、種田のことを「昔そんな人もいたなぁ」と感じるぐらいまで忘れていってしまうのだと想像できます。でもそれが人間が他者と出会い、生きるということなのかもしれないなと。

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物語のラスト。芽衣子が帰り道の電車でソラニンの一節を思い出す。

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どこまでも感傷的だな浅野いにお。

あの頃と全く違う価値観を持った今でも大好きです。

 

ソラニン 新装版 (ビッグコミックススペシャル)

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零落 (ビッグコミックススペシャル)

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