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【映画レビュー】帰ってきたヒトラー - 世界的なレイシズムへの強烈な風刺作品 -

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どうもメガネです。今日は2015年のドイツ映画「帰ってきたヒトラー」のレビューをしていきます(日本での公開は2016年)。作品自体は同名小説が題材ですが、そちらは読んでおりません。

総評:8/10

結論からいうと強烈な風刺映画です。しかし随所に織り込まれる喜劇的要素や現代社会が抱える問題をヒトラーという稀代の大悪人(あるいは扇動者)を通してコミカルに批判する作風から軽い気持ちで視聴することができます。ナチズムというある意味普遍的イメージをもつ民族社会主義を現代に持ち込むことでそのコントラストを強く感じることができます。


帰ってきたヒトラー 映画予告

あらすじ

2014年のベルリンに蘇ったヒトラーは、疲労で倒れ込んだところをキオスクの主人に助けられ、そのままキオスクに居候することになった。同じ頃、テレビ会社「My TV」をクビになったザヴァツキは、撮影した映像にヒトラーそっくりの男が映り込んでいるのを発見し、テレビ会社に復職するための自主動画を撮影するためヒトラーと共にドイツ中を旅する。ザヴァツキは撮影した動画を手土産にテレビ会社に復職し、ヒトラーはトーク番組「クラス・アルター」へのゲスト出演が決定した。ヒトラーの政治トークは視聴者の人気を集め、一躍人気者となる。しかし、ドイツ人にとってタブーである「ヒトラーネタ」で視聴率を集める局長のベリーニに反発するスタッフが現れ始め、中でも局長の地位を狙う副局長のゼンゼンブリンクはベリーニを失脚させるため、ヒトラーのスキャンダルを探していた。ゼンゼンブリンクはヒトラーがザヴァツキとの旅の途中で犬を射殺していたことを知り、トーク番組でその映像を公開させる。視聴者からの批判を受けたヒトラーは番組を降板させられ、彼を重用したベリーニもテレビ会社をクビになる。

ザヴァツキの家に居候することになったヒトラーは、自身の復活談を描いた『帰ってきたヒトラー』を出版する。『帰ってきたヒトラー』はベストセラーとなり、ザヴァツキとベリーニは映画化を企画する。一方、ヒトラーが降板した「クラス・アルター」は視聴率が低迷し打ち切りが決まり、新局長となったゼンゼンブリンクは番組を立て直すため映画製作への協力を申し出る。映画製作が進む中、監督となったザヴァツキは恋人のクレマイヤーの家にヒトラーと共に招待されるが、ユダヤ人であるクレマイヤーの祖母がヒトラーを拒絶する。クレマイヤーがユダヤ人だと知った時のヒトラーの反応を見たザヴァツキは疑念を抱き、ヒトラーが最初に現れた場所が総統地下壕跡地だったことに気付き、ヒトラーがモノマネ芸人ではなく本物の「アドルフ・ヒトラー」だと確信する。ザヴァツキはベリーニに真実を伝えるが相手にされず、取り乱した様子から「精神を病んだ」と判断されたザヴァツキは精神病棟に隔離されてしまう。映画がクランクアップした頃、ヒトラーは自身を支持する若者を集めて新しい親衛隊を組織し、再び野望の実現のために動き出す。

- Wikipediaより引用 -

見所

蘇る世紀の独裁者アドルフ・ヒトラー

ヒトラーといえば独裁者の代名詞とも言える人物です。ホロコーストをはじめとした多くの大虐殺を先導し、強い民族主義者でした。その末路といえば第二次世界大戦終戦間近の1945年4月に敗戦を目前に逃走先で自害します。ヒトラーとはヨーロッパではある意味タブーといえる存在で、以前イギリスのヘンリー王子がナチスの腕章(ハーケンクロイツ)をつけ大きな問題にもなりました。ナチス式敬礼と呼ばれる腕を前に突き出して行う敬礼はドイツで行うと逮捕・処罰の対象となります。

そんなヒトラーが自害する記憶を失くした状態で、2014年のドイツに蘇ります。これが似てるんです。見た目はもちろんのこと、その喋り方や立ち振る舞いまでがヒトラーの演説そのもの。あのジトッとした目に、不機嫌そうな表情。ヒトラーそのものです。

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めっちゃバズるヒトラー

ヒトラーは移民政策を進める弱いドイツに嘆きながらも、各地で現在のドイツの現状を聞いて歩きます。彼の周りはあくまでヒトラー本人をソックリなコメディアンと認識し、一部の左寄りの方々からは不謹慎だと注意を受けますが、多くの若者たちはSNSにシェアして楽しみます。このあたりのヒトラーが民衆の心を掴む描写うまい。誰も彼を本物とは思わない。当たり前です。彼は70年前に自害したのですから。

そしてバズったヒトラーはついにテレビ番組への出演を果たし、スターへの階段を登っていくことになります。

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文明の進歩に感動するヒトラー

最初こそ現代に戸惑いを見せたものの順応するヒトラーはテレビ、インターネットに強い関心を持ちます。「我々の時代にこれがあれば・・」。新しい物を排斥するのではなく、受け入れ活用するのは流石です。初めてGoogleにアクセスした時のヒトラーの感動は相当なものでしょう。

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風刺映画としての側面・製作者側のメッセージ

ヒトラーはその饒舌な演説と親しみやすいキャラクターで瞬く間に民衆の心を掴みます。また多くの右寄り政党と接触し、支持者を増やしていきます。「我が闘争」に続く2冊目の本は大ベストセラーとなり、映画化。ついにヒトラー本人であることに気づき、止めようとするザヴァツキは精神異常者として精神病院に収容されてしまいます。ヒトラーは新たに親衛隊を組織し、不敵な笑みを浮かべるところでクライマックス。世界各地で起きているレイシズムを中心においたデモ等の現実の映像が音楽とともに映画は幕を閉じます。

昔から国民の幸福度が低下するほどに、社会は右化していくという傾向があります。例えば失業者や非正規雇用の低所得者等、仕事や特技・趣味に十分なアイデンティティを獲得できなかった人間たちは人種・民族・国家に自身のアイデンティティを求めてしまうのです。最近は「日本人すごい!」「日本文化が海外で大人気」「天皇は世界で一番権威のある元首」など、やたらと日本・日本文化を標榜する番組やサイトが増えました。それだけ日本社会全体に元気がないということでしょうかね。本作の製作国であるドイツも移民問題を抱えています。そしてそんなやんわりとした不満をヒトラーが陽動することにより、いとも簡単に思想を支配され、再びゲルマン民族の復権を狙うヒトラー。意思を持たない傀儡たる民衆と強いリーダーシップを持った独裁者。つまり環境さえ整えばいつだって独裁者は生まれるという警鐘を本作は鳴らしています。

日本でも「安倍批判」「安倍支持」のみで政治が語られがちですが、そもそも善悪や良し悪しの判断を二元論的に求めること自体が誤りではないかと私は思っています。しかし現実問題として議論は常に是か否かのみで語られ、最終的にノイジーマイノリティの意見が通ることが多いのではないでしょうか。(インターネットの発達が一役買ってます)

日本でもたびたび議論される右か、左か。

まっすぐ歩くのは難しいのでしょうか?